2016年1月19日火曜日

2016年1月「Next Medical Device Innovation」臨時号
〈東京大学政策ビジョン研究センター医療機器の開発に関する政策研究ユニット(以下、医療機器ユニットとする)は、マンスリー・ニュースレター「Next Medical Device Innovation」で国内外のニュース、および、活動報告を皆様にお届けします。〉
 
こんにちは。
2015年4月12日HIV予防シンポジウム開催後、10月21日に東京大学にてフォローアップ座談会を開催しました。高校生、大学生、大学院生、省庁の方々にお集まり頂き、色々なお話を伺うことができました。
ブログの中では10月27日に総括としてご報告しましたが、なぜHIVに興味を持つことになったのか、自分の周りの方との意識との違いや変化等、省庁の方のお仕事を通して感じておられることなど、とても貴重なお話を伺うことができましたので、数回に分けてご紹介させて頂きます。                          [photo:今 祥雄]
 
 
【横浜雙葉高校3年 高木美里様】
 
  シンポジウム後の変化 ◆
 
この勉強会等を通してHIVに興味をもち、国や省庁のことを知ったことで、小さなNGOではどうなっているのかと思うようになりました。シンポジウム後、aktaの荒木さんが主催するイベントに参加したり、国際NGO・プラスという団体と関わらせてもらったりと自分自身にとても影響を及ぼしたシンポジウムだと思っています。早稲田大学付属学校の生徒会主催イベントでHIVを扱いました。HIVを議題にあげたいと提案したときに、周りからは「そんなことするの?」という反応で、高校生からHIV問題は遠い存在であるとあらためて実感しました。その後、そのイベントに参加した方が卒論として扱うと聞き、このような機会がとても必要であると感じました。
 
  高校生からみた省庁や東京大学という魅力 ◆
 
勉強会などで省庁へ行きましたが、普通の高校生が省庁へ行くということがどれほどすごいことなのかと実感しました。周りから「なぜ行くの?なぜ入れるの?」という反応で、この点をきっかけとして興味を持ってもらえるのではないか、そこから普及していくことも可能なのかなと思いました。今回のシンポジウムも100名参加してくれたのも、省庁や東京大学が関わっていることも大きな点だと思います。
 
  エイズへの偏見 ◆
 
小さい時にエイズが発症してカポジ肉腫となった写真を見たことがあり、これがエイズだと思い、どうやって感染し発症するのかを知らないのにエイズというものに偏見を持っていました。学校の授業で知り、何も知らないのに偏見を持っていた自分が嫌だと思いました。それから興味を持つようになりました。
 
  授業でのエイズ ◆
 
学校での授業が意外といきているのだと感じました。例えば、生物や生命倫理の話であったり、国語での文学などで、全く関係のないHIVと思っていたが、色々なところで学んでいたことがわかりました。それもこのようなイベントに参加できてわかったことなので、ぜひ多くの人にこのような経験をしてもらえたらと思います。



【東京都立三鷹中等教育学校6年 寺尾昌人様】
 
                    ◆ 草の根の大切さ ◆
 
貧困問題にとても興味があり、学校での模擬国連等で取り上げたりして問題意識を深めていきました。エイズに関してはあまり知らなかったのですが、勉強会等を通して貧困問題と近い部分があると感じました。勉強会の中で、ゲイの方の地位向上に奮闘している方のお話を聞き、いかに自分の問題として考えられるかが解決への道だと思いました。今回のシンポジウムでは、草の根の大切さということを学び、自分にできることはこの草の根の部分であり、自分でできることを探していきたいと思います。
学校では、エイズについて考えることは皆無であり、この場にいる方が特異ともいえ、でもこの方達がいなければ広がることもないのだと思い、その一人となれたことを嬉しく思っています。また、友達にエイズの話をすると最初はひかれてしまいますが、話してみると案外興味を持ってくれたりして周りの変化を感じます。これからも問題意識を深めていきたいと思っています。
 
  今後の進め方について ◆
 
少人数で進めていくのが良いと思います。このような社会問題等を開示していく際、リーダーシップをとっていくのは一部の方であり、この方にもっと知識を深めてもらい、どう広めていくかが大切だと思います。最近情報を集める手段は、SNSやフェイスブック、特に動画をよくみなさんが見てくれます。このような手段を用いて広めていければいいのかなと思います。
生物の授業で免疫について学び、地理で南アフリカでの平均寿命が短いのはHIVによるものだと学びました。一番重要なのは、学ぶだけではなく、このようなイベントに参加して問題意識を作ることでもなく、このような活動をつなげていくことだと思います。もっと多くの方が学びつなげていければ、よい方向へいくのではないかと思います。
 
  貧困問題からHIVへ ◆
 
なぜ貧困問題に興味があるかですが、アメリカ留学したときのホストマザーが人種に関係なく受け入れる方で、みんな同じ人間であり、生まれもってひとりの人間として尊重されるべきであると強く思いました。エイズに関していまだに偏見があり、うつるものでもないのにHIVだからひとりの人間として尊重されないのは問題だと思っています。
 
 
東京大学大学院 武長徹様】
 
 
  シンポジウムの感想と
   今後の展開について ◆
 
シンポジウムの感想としては3つあります。普段お会いすることのない講演者の方に直接お会いできたこと貴重な体験でした。また、参加した100名の学生の意識が非常に高くて驚きました。また、勉強会をはじめ、小さなことの積み重ねが大きなものとなることを実感しました。全体を通してとてもすばらしいシンポジウムだったと思っています。
今後については、高校生が魅力的と感じている省庁や東京大学などを使って勉強会を行っていくのが良いと思います。少人数の方が容易に継続可能だと思います。学びたいことを省庁などの方から学び、それを高校生の立場から発表していく、または、専門家の講演後、学生がパネルとなってディスカッション、一般の方からの質疑応答などのスタイルでも良いと思います。モチベーションの高い学生による専門家との対話のようなイベントなど、学生が次の方へバトンタッチしていければ、継続しやすいのではないかとも思います。
 
  感染症はHIVだけではない ◆
 
ウイルスの研究をしているので、HIVについては、感染症の一つとして捉えています。HIVは先進国で流行したこともあり、薬の開発も進みました。一方、西アフリカで局所的に流行してきたウイルス性出血熱のエボラやラッサといった感染症のワクチン開発は進んできませんでした。市場規模が小さく、ほとんど先進国で流行していないため、企業は参入をしてこなかったのが現状です。今回のアウトブレイクを切欠に、エボラについては広くメディアで取り上げられたので、ワクチン開発が進んでくれることを切に願います。また、エボラはセクシャルトランスミッションをするという報告があり、今後HIVに近い偏見がでてくると思いました。今、HIVのこれまでの経緯を勉強することでエボラや他の感染症の政策的側面にも生かせると思い、このシンポジウムに参加することにしました。今後は、エボラやラッサのワクチン開発に向けた研究を進めていくので、今回のシンポジウムの経験を生かせていければと強く思います。
 
 
 
医療機器ユニットは、研究開発、薬事規制、および保険収載・償還を中心に、多岐にわたるグローバルな医療機器に関する政策研究を世界中に提供している有数の研究ユニットです。2009年に発足した日本で最初の大学における医療機器に特化した政策研究ユニットであり、東京を本拠地として、ワシントンD.C.やロンドン、その他の世界の主要な拠点とのネットワークを擁しています。
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