2016年4月5日火曜日

2016年4月「Next Medical Device Innovation」臨時号
〈東京大学政策ビジョン研究センター医療機器の開発に関する政策研究ユニット(以下、医療機器ユニットとする)は、マンスリー・ニュースレター「Next Medical Device Innovation」で国内外のニュース、および、活動報告を皆様にお届けします。〉

こんにちは。
2015年4月12日HIV予防シンポジウム開催後、10月21日に東京大学にてフォローアップ座談会を開催しました。高校生、大学生、大学院生、省庁の方々にお集まり頂き、色々なお話を伺うことができました。
ブログの中では10月27日に総括としてご報告しましたが、なぜHIVに興味を持つことになったのか、自分の周りの方との意識との違いや変化等、省庁の方のお仕事を通して感じておられることなど、とても貴重なお話を伺うことができましたので、数回に分けてご紹介させて頂きましたが、今回で最後となります。みなさまの中で少しでも問題意識をもって頂けたのならとてもうれしく思います。                [photo:今 祥雄]


慶応義塾大学1年 伊達佳内子様




◆勉強会やシンポジウムに
          参加後の変化◆

学校ではHIVについて時間を割いて学ぶ機会はありませんでしたが、勉強会から参加して医療分野や政府のような大きな社会と個人とがどのようにつながっていけるのかということを学びました。その後、シンポジウムに参加していた方やゲイの方と再会する機会がありましたが、HIV勉強会やシンポジウムで学んだことがとても役立ちました。HIVやLGBTについて大学でもオープンに話すことができていて、自分自身、成長を感じています。

今後は学生が運営するブログ等によりHIVに関して高校生などの学生のインタビューした記事を載せていくのも良いのかなと思います。


◆なぜHIVに興味を
    持つようになったのか◆

中国に短期留学した際、6歳ぐらいの男の子が高級飲食店でiPad片手にゲームをしながら食べていました。その帰り道に同じぐらいの男の子が引き車の上に座っていてお父さんが引いていました。同じ国なのにこんな格差(貧富の差)があることに驚き、興味を持ち始めました。また、ビジネスプランコンテストに出場する機会があり、妊産婦死亡率(MDGs)を下げるためにはどうしたらよいかがテーマで、HIVの問題などを勉強することになりました。今後は、学校や後輩に対しても何かアプローチしていけたらと思っています。


 
埼玉県立越ヶ谷高等学校3年 柿嶋夏海様】


◆社会的排除されている
        障害者とHIV
私がこのシンポジウムに運営側として参加したのは、この座談会に出席している高木さんのエイズに対する問題意識がとても高く、最初はなぜ高校生なのにこんなに難しいことを考えているのだろうかと思い、遠い存在として見ていましたが、話しているうちに学校の保健の授業では知らないことばかりでどんどん面白いと感じるようになったからです。
大学では障害者の社会的排除について学びたいと思っています。小さい時から脳性まひの友達がいますが、彼女が特別支援学校へ進み同じ学校へ行けないのはなぜなのかと思っていました。ものの選択のあり方も全くことなり、例えば障害があるからおしゃれはできないと自分自身あきらめている部分もあります。また、アメリカに行ったときにできた友達も帰国後ゲイだと告白されました。殺されてしまうかもしれないから怖いという話を聞き、今まで全然考えたこともなかったことで驚きました。このように他の人とは何か少し異なっているだけで社会から省かれてしまう状況は、障害者もHIV等の方も共通する部分があると感じています。このことをどうやったら広めていけるのか、いかに自分のこととして考えてもらえるかが大切だと思っています。


アメリカと日本のエイズ教育◆
学校に外交官の方が来られてアメリカと日本の教育の差についてお話されました。その時ちょうど同性愛者の結婚が認められた(アメリカ)ときで、LGBTやエイズに力を入れているのか聞きましたが、特に力をいれているわけではないとのことでした。アメリカが進行しているから日本でも必要であるかというとそうではなく、文化や民族的な考え方に基づく日本のやり方で行っていくべきとのことです。でも周りの友達は、LGBTとエイズが関連していることも知らず、勉強会等で学んだことを話すと関心をもってくれました。このシンポジウムに参加した100人は比較的意識の高い学生であり、どうしたらもっと広めていけるのか、自分のこととして考えてもらえるのかということが大切だと思っています。


【高校3年 T.M様】

◆エイズは遠い存在ではない◆

学校で模擬国連という部活動があり、そこで貧困問題に関心を持ち、MDGsを知りその8つのゴールの中でも達成率が悪いエイズの問題に興味をもつこととなりました。本やネットの情報ではなく、専門家から直にお話を聞けたことは良い経験となり、知見を深めることができました。シンポジウム後に模擬国連でエイズに関して会議を行いましたが、エイズというのは遠い存在と思われているが、いかに自分にとって身近なことであるか気づかされました。シンポジウムの参加者100名という輪がどんどん広がればいいなと思っています。

◆高校生からみた省庁◆

別の機会ですが外務省へ取材させてもたった時に、その雰囲気に圧倒されました。とてもセキュリティーが厳しく、貴重な経験となりました。このように省庁へ行くというのも魅力だと思い、この点を使って広めていければよいのではと思います。多くの高校生をいくつかのグループに分けて、グループ毎に省庁などに取材へ行き、それを動画配信やプレゼンテーションする場を開いてみんなが情報を共有できれば良いと思います。

◆自分の心を動かすような出来事◆

ニューヨーク州に8年間滞在していて、その間に911を体験しました。当時4歳でしたが、周りがとても慌ただしかったことと恐怖感などを覚えていて、これがきっかけとなり国際政治に関して興味をもつようになり、模擬国連へ入りました。活動を通して国連の取り組みやMDGsを学んで感じたことは、できるだけ早い段階で自分の心を動かすような出来事を経験するのが良いということです。HIVというかけ離れたものでも自分に近い存在だと経験できれば、問題意識が芽生えるきっかけとなるのではないかと思います。


【東京大学公共政策大学院 佐藤智晶先生】


◆学生からみた東京大学と省庁◆

高校生のみなさまからのお話で、東京大学や省庁の方々とのつながりがいかに貴重な体験であり、関心をもってもらえるということがわかりました。多くの大学の関係者というのは実務をまったく知らないので、講義ばかりで面白くないという意見もあります。高校生でも同じような感覚を持っていることに気づきました。アメリカなどでは、真面目な議論を行うスタイルを大切にしていますが、日本はなぜそのような話をするのかという風潮があるのであれば、大学から学び方や議論の扱い方を変えていければと思っています。

◆HIVをとりまく人たちの行動変容◆

最近、大学では行動変容を生み出す科学というトピックに関心が高まってきました。たとえばあるスポーツジムの話で、なぜ高いお金を出して自分の身体を鍛えたいと思うのか、という点です。お金を払ってでも綺麗になりたい、痩せたいといって行動を変えようとしています。このような気持ちにさせるものは何なのかということです。どんな人が働きかけた時に他者は反応するのか、もし反応しやすい方がわかればその方にどのような情報を与えれば良いのか、また誰が伝えればより効果的なのかなどです。例として、病気の予防に関して省庁の方が言えば効果的なのか、医師などの専門家が言った方が効果的なのかなど、このような科学が必要とされてきているのではないかという議論が始まったところです。
今後、HIVの勉強会等を行っていく中で、HIV予防、治療、HIV患者への理解やサポートなどのモチベーションが何なのかということを明らかにし、モチベーションが一定レベルまできている方には誰が、どのような情報を、どのように与えると変わっていけるのかなど導きだせれば、HIVをとりまく人たち、すなわち社会の人々の行動変容を起こすことができるかもしれないと思っています。






医療機器ユニットは、研究開発、薬事規制、および保険収載・償還を中心に、多岐にわたるグローバルな医療機器に関する政策研究を世界中に提供している有数の研究ユニットです。2009年に発足した日本で最初の大学における医療機器に特化した政策研究ユニットであり、東京を本拠地として、ワシントンD.C.やロンドン、その他の世界の主要な拠点とのネットワークを擁しています。
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